68号決議:ベトナム民間経済発展のブレークスルー
01/11/2025
68号決議:民間経済分野の転換点
2025年5月4日、ベトナム共産党中央政治局は「民間経済の発展に関する68号決議(68-NQ/TW)」を正式に公布しました。これは、民間経済の発展における重要な節目であり、ボトルネックの解消とともに、民間部門の飛躍的成長への道を切り開くものと評価されています。
ベトナムにおける民間経済の現状
民間経済は、国民経済を構成する主要な構成要素の一つであり、個人企業、有限責任会社、株式会社、個人経営事業者などの形態を含みます。約40年にわたるドイモイ(刷新)政策のもとで、民間経済は次第に重要な役割を担うようになってきました。主な統計は以下の通りです:
- 約94万社の企業が稼働中(前年比2%増)
- 500万超の個人経営事業者が存在
- GDPの約50%を占める
- 国家予算歳入の約30%を担う
- 全国労働力の約82%を雇用
Vingroup、Vinamilk、Hoa Phat Group、Hoa Sen Group など、国際的に成長している代表的企業も登場しています。
現状の課題と制約
しかし、民間経済分野は依然として多くの課題に直面しています:
- 2025年までに150万社を達成するという目標は未達成
- GDPに対する貢献率は依然として55%以下(現状50〜58%)
- 約98%が中小企業(SMEs)
- グローバル・バリューチェーンへの参加能力が乏しく、主に下請け業務に集中
- 2024年には約19万8000社が市場撤退、過去最多
68号決議における民間経済発展の目標
68号決議では、民間経済に関して以下のような具体的かつ定量的な目標を掲げています:
- 2030年までに稼働企業数200万社、うち少なくとも20社がグローバル・バリューチェーンに参加
- 2045年までに300万社以上、GDPの60%以上を占める
- 民間経済の年間成長率:10〜12%
- 国家歳入への貢献:35〜40%
民間経済は「国民経済における最も重要な原動力の一つ」として位置づけられ、思考や制度面での抜本的な見直しが求められています。
68号決議における注目すべき新機軸
1. 偏見の払拭と透明・安定した経営環境の整備
68号決議は、以下のようなビジネス環境の構築を目指します:
- 透明性・安定性・低コスト
- 国際基準への適合
- 地域およびグローバルな競争力の強化
2. 事前許可制から事後チェック制への転換
従来の事前審査制度に代わり、企業は以下の恩恵を受けます:
- 能力に応じた自由な経営・投資が可能
- 行政手続きや参入コストの軽減
- 国家は基準・規格に基づき出口管理と監督を実施
3. 刑事責任の限定化と過誤に対する修正機会の拡充
- 民事・経済・行政措置を優先、刑事訴追は最終手段
- 誤りや違反があっても是正と再出発の機会を確保
4. 個人責任と法人責任の明確な分離
- 違反行為および関連資産に対してのみ責任追及
- 労働者や企業の損失を最小限に抑える配慮
68号決議の実施上の障壁
1. 決議と実行のギャップ
グエン・ディン・クン博士によると「問題は内容ではなく、実行段階にある」。独立した監視機関の欠如が、政策の形骸化や効果の遅延を招いています。
2. 法制度の一貫性の欠如
- 重複、矛盾、時代遅れの規定が混在
- 自主管理に頼る制度変更では限界がある
3. ESGの導入に対する中小企業の課題
ESGの導入は推奨されているものの、以下のような課題が存在します:
- 知識・実務経験の不足
- 財務・人材・技術面のリソース不足
- 中小企業向けの明確なガイドラインが不在
民間経済発展のための推奨事項
1. 法制度の整備・簡素化
- 法律、政令、通達の包括的見直し
- ビジネス条件の明確化と簡素化
- 破産法の改革と独立評価機構の設置
2. 実施体制の強化と透明性の確保
- 独立した監査・監視体制の確立
- 定期的な定量評価と公開報告制度
- 政治的・行政的責任の明確化
3. モデル転換と能力向上の支援
- 中小企業向けのESG導入支援プログラム
- 技術実証サンドボックス制度の整備
- 国家データ基盤の構築
4. 非公式コストの排除と「法的安心感」の醸成
- 小規模汚職の根絶
- 紛争解決手続きの迅速化
- 個人事業から法人化への移行支援
結論:政治的コミットメントと信頼の醸成が成功の鍵
68号決議が民間経済の飛躍的成長の起爆剤となるためには:
- 強力かつ継続的な政治的意志
- 透明かつ実効性のある監視制度
- 安定した法的・心理的ビジネス環境
が不可欠です。企業が法的リスクや行政手続きに怯えることなく、イノベーションと持続可能な成長に専念できる環境こそが、ベトナム経済の次なる原動力となるでしょう。
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